2025/6/1 (更新日:2025/6/1)
CO2を排出するので環境に良くないと言われている汽力発電所での熱効率向上対策【中級者】

CO2を排出するので環境に良くないと、汽力発電所は言われています。
それでも汽力発電所を活用しないといけない状況もあります。
そこで、汽力発電所では熱効率向上対策をして、CO2排出量を削減する努力がされています。
ここでは、汽力発電所では熱効率向上対策に特化して解説します。
ご一読ください。
1.汽力発電所の発電の概念

はじめに、汽力発電の基本的な仕組みを説明します。
ボイラで水を沸かして蒸気をつくります。
その蒸気を加熱することで、高温加熱にして膨張する力を利用してタービンを回します。
タービンの回転で発電機を回して発電します。
汽力発電の仕組み

次の章で、工夫して効率向上のために対策されている具体的な内容を解説します。
*現状の汽力発電の仕組みについて知りたい方は、下記を参照ください。
CO2の排出量が多いとされる発電方式の火力発電の仕組みを理解しよう
2.汽力発電所での熱効率向上対策

原理の通りにすれば発電はできるのですが、無駄に熱を放出したり、野放図にCO2を放出したりすることになります。
実際には、放出する熱を再利用して熱効率を高めています。
その結果、CO2や有害物質の放出量も低減しています。
汽力発電所の熱効率向上の仕組み

汽力発電所における熱効率向上の具体的対策内容を説明していきます。
代表的な汽力発電所の熱効率向上対策は以下になります。
*各項の番号と図中の番号は対応しています。
① ボイラの排熱を回収して蒸気を加熱
通常は、ボイラで加熱された蒸気が、蒸気ドラムから排出されタービンに送られます。
その高温・高圧の蒸気がタービンに噴射されて回転します。
より高温・高圧にした蒸気をタービンに噴射すれば、より高速に回転させることができます。
通常送っていた蒸気を、再び燃焼室の加熱器を通過させることで、蒸気を再加熱し高温・高圧にします。
高温・高圧にすることで、より勢いよく高回転でタービンを回すことができるようになります。
② 海水利用によりタービンから出る蒸気を冷却
通常、復水器では、タービンを回し終えた蒸気が温水になります。
復水器では、海水を使い蒸気を冷却し、復水器真空度を高くしタービンの回転数を高くするように助けます。
海水で冷却をすることで、急激に気体から液体に変化して復水器内は真空度があがります。
真空度が上がると、蒸気を吸い込みやすくなり、タービンの回転力向上に寄与します。
③ 使い終わった蒸気をボイラで再加熱(排熱回収)+再利用して低中圧タービンを回す
通常、高速タービンを使って発電機を回します。
タービンで使用した蒸気は、そのまま復水器に送られ温水になります。
中低速タービンを追加することで発電機をより大きな力で回します。
高圧タービンから出る蒸気を、捨てずに中低速タービンで再利用する再熱サイクルを応用しています。
高圧タービンから出た湿り飽和蒸気を、復水器に送ることなく再熱器で加熱し温度をタービンを回せるぐらいの高温にします。
高圧タービンから出る蒸気を燃焼室にある再熱器を通すことで蒸気をより高温・高圧にします。
高温・高圧にした蒸気を中低速タービンに噴射することで、中低速タービンを回すことができます。
④ タービンから排出される蒸気の熱を再利用して水を加熱
通常は、タービンから排出される蒸気は、復水器で温水に戻ります。
再生サイクルでタービンから蒸気の一部を取り出し(抽気),給水加熱器で給水を加熱します。
高圧タービンや中低速タービンから出る蒸気を、給水加熱器に供給します。
蒸気の熱でボイラに供給する水(温水)の温度を上げます。
水の温度が高いほうが、ボイラで加熱したときに蒸気になりやすくなります。
ボイラの発熱量が抑えられます。
⑤ 煙道(煙突)の排熱を再利用して水を加熱
通常は、復水器から供給される温水をそのままボイラで加熱して蒸気にします。
復水器、給水加熱器から供給される温水を、煙道(煙突)にある節炭器を通します。
煙道の節炭器ではボイラの燃焼ガスで温水に熱を加え温度を上げます。
蒸気になりやすくなり、ボイラの発熱量が抑えられます。
⑥ 煙道(煙突)の排熱を再利用して空気を加熱
通常は、外気・空気をそのまま吸引しボイラに供給します。
ボイラに供給する空気を、煙道(煙突)にある空気予熱器を通します。
空気予熱器でボイラの燃焼ガスでボイラに供給する空気を加熱し温度を上げます。
高温の空気のほうが燃焼しやすくなります。
⑦ 燃焼温度を高く維持するように空気/燃料比をコントロール
通常は、燃料をそのまま燃やします。
燃焼には適した、空気と燃料の比率があります。
最適な燃焼空気量にコントロールして燃焼温度を上昇させます。
空気量が不十分だと不完全燃焼となり効率は下がり,一酸化炭素が発生します。
空気量が多すぎても少なすぎても効率の良い燃焼をしません。
燃料、空気量、温度などを制御してボイラの発熱が最適になるように維持しています。
⑧ 最終的に排出するガスの温度が低くなる様に全体をコントロール
通常は、ボイラで燃焼した後の排ガスはそのまま排出されます。
排ガスは、ボイラで発生した熱エネルギーの一部が外に逃げてしまう損失です。
排ガス温度が低いほど、排ガスの熱エネルギーが少なくなり、損失が減少します。
排出ガス温度を低く制御することが、ボイラの効率が高いことになります。
ボイラで生じる熱エネルギーが逃げない構造や、再利用して消費するシステムを構築します。
排ガスには人体への影響が懸念されているダイオキシンが含まれています。
ダイオキシンは、排ガス温度を低くすることで合成されるのが抑えられる性質があります。
排ガス温度を下げることで、熱エネルギー損失とダイオキシンの放出量を低減します。
3.まとめ

汽力発電の効率向上手段について解説しました。
参考にしてもらえれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
説明できる内容は限られていますが、極力正確に伝えるように心がけました。
足りない部分、適切でない部分、補足などが有りましたらご指摘等お願いいたします。
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