2023/11/6 (更新日:2023/11/9)
インボイス制度では免税対象のフリーランスが課税事業者に登録できます。あなたならどうする?インボイス制度をわかりやすく解説
2023年10月1日から開始されたインボイス制度はわかりますか?
免税対象のフリーランスが課税事業者に登録すべきか否かを判断するのに必要な基礎知識を提供します。
インボイス制度の仕組みをフリーランス・個人事業主にわかりやすく解説します。
移行時の緩和措置や登録に必要な処理内容もわかりやすく説明します。
安心してインボイス制度に対処できるようになりましょう。
■目次
1. インボイス制度では免税対象のフリーランスが課税事業者に登録できます。あなたならどうする?
2. インボイス制度の消費税の基本の仕組みをわかりやすく
3.インボイス制度で課税事業者登録をしたフリーランスの緩和措置をわかりやすく
4. インボイス制度で課税事業者登録をしないフリーランスの緩和措置をわかりやすく
5. インボイス制度でフリーランスが行う処理をわかりやすく
6. インボイス制度でフリーランスが注意することをわかりやすく
7. まとめ
1.インボイス制度では免税対象のフリーランスが課税事業者に登録できます。あなたならどうする?
2023年10月1日から開始されたインボイス制度ですが、免税事業者のフリーランスの方で「課税事業者になるべきか?」迷っている方が多く居ます。
免税事業者の選択肢は、二択
- 課税事業者になって、取引に見合った消費税を払う。
- 免税事業者のままで、値引きや取引依頼件数減のリスクを負う。
消費税に関して、双方の仕組み、減額などの経過措置を整理します。
1-1.フリーランスのインボイス制度の仕組み
免税対象のフリーランスが、免税事業者を続ける場合、
- フリーランスの収入は変わりません。
- 取引先会社は、フリーランスとの取引に応じた消費税分を余分に納税します。
免税対象のフリーランスが、課税業者になる場合、
- フリーランスは、取引先会社との取引に応じた消費税分を納税します。
- 取引先会社は、以前同様の消費税を納税します。
1-2.フリーランスにとってのインボイス制度の得失
選択がしやすいように、実際に即して得失を整理します。
免税対象のフリーランスが、免税事業者を続ける
【メリット】 ①消費税を納税しなくてよいので収入の変化がない ➁課税事業者の申告をしなくてよいので手間がかからない ③請求書をインボイス対応フォーマットに変更する必要がないので手間がかからない |
【デメリット】 ①仕入税額控除が適用できず取引先会社に損失が発生する ➁取引先会社から値引きや依頼件数を減らされる可能性がある |
【経過措置の税額の効果】*1 フリーランスは変化なし 取引先会社の支払う消費税は、2割のみ |
免税対象のフリーランスが、課税業者になる
【メリット】 ①仕入税額控除が適用できるので取引先会社に損失が発生しない ➁取引先会社からの依頼件数や個別の受注金額を維持しやすい |
【デメリット】 ①消費税を申告し納税しなくてはならないため収入が減る ➁課税事業者の申告をするための手間がかかる ③請求書をインボイス対応フォーマットに変更する為手間がかかる |
【経過措置の税額の効果】*1 フリーランスが支払う消費税は、2割のみ 取引先会社は変化なし |
*1:フリーランスが免税事業者を続けても、課税事業者になっても令和8年9月30日までは経過措置で税額の控除があります。
状況は少しわかっても、選択はまだ難しいかもしれません。
ここで乱暴に、取引先会社の本音を推測してみると、
①できるだけインボイスを発行できるフリーランスと取引したい
➁免税業者のフリーランスはインボイスを発行できないから、取引量を減らすか取引額を下げて(値引き)もらいたい。
③購入する商品・技術・品質は落としたくない。
1-3.インボイス制度でフリーランスが免税事業者が向いている人/向いていない人
そこで、課税事業者を申請する/しない!を判断する概念案を書いてみました。
インボイス発行事業者にならなくても良い人
- お客さんが事業者ではなく一般消費者
- 他にはない唯一無二の技術を持っている人
- 取引先が免税事業者・簡易課税事業者
インボイス発行事業者になる方が良い人
- 売上が1000万円を超えている人
- 取引先が規模の大きい事業者
- お客さんに一般消費者と事業者が混在している人
結局、フリーランス各自の状況に応じて免税事業者になるかならないかは判断する必要があります。
私の場合は、収入が減るのは厳しいのですが、課税事業者となりました。
取引先会社への負担が少しでも増えて負担をかけるのが嫌だという理由です。
しかし今は、フリーランスに極端な不利益が生じる場合は、下請法・独占禁止法があります。
なので、下請法・独占禁止法により保護されていますから取引先会社へ気を使いすぎないようにしましょう。
取引先会社でも、現状の取引関係を継続することに重きをおいて消費税の負担を受け入れている会社もあります。
その場合は、免税事業者を継続しても問題ないでしょう。
それぞれの置かれている環境にそくして判断が必要です。
2.インボイス制度の消費税の基本の仕組みをわかりやすく
インボイス制度で影響を受けるのは、免税事業者です。
免税事業者とは、課税の売上額が1000万円に達していない事業者を指します。
インボイス制度では、消費税納税を免除されている免税事業者が、申請することで課税事業者になります。
2-1.インボイス制度開始以前の消費税の流れ
一般の課税売上1000万円超えの事業者の商品と消費税の流れ
A会社、取引先会社それぞれが消費税を納入します
一般の仕入税額控除が適用される取引です
仕入税額控除とは、
納める消費税=受け取った消費税ー支払った消費税
課税売上1000万円未満の免税事業者フリーランスの商品と消費税の流れ
取引先会社は、フリーランスの消費税分(20000円)を差し引いて消費税を納入すれば良い
フリーランスが免税事業者として認められている場合は、仕入税額控除が適用されます
2-2.インボイス制度開始以降の消費税の流れ
免税事業者が課税事業者となりインボイス(=適格請求書)を発行する場合
フリーランスが、インボイス(=適格請求書)を発行する為、仕入税額控除が適用されます
取引先会社は、フリーランスの消費税分(20000円)を差し引いて以前と同じ額の消費税を納入すれば良い
フリーランスは、消費税負担*1 (20000円)が増えます
*1:緩和措置による消費税負担の軽減があり後述します。
フリーランスが免税事業者を続け普通の請求書を発行する場合
フリーランスが、インボイス(=適格請求書)を発行しないので、仕入税額控除が適用されません
取引先会社は、フリーランス分の消費税*1(20000円)も合わせて納税する必要がある
フリーランスは免税事業者を継続し、消費税の負担はなく収入は変わりません
*1:緩和措置による消費税負担の軽減があり御述します。
3.インボイス制度で課税事業者登録をしたフリーランスの緩和措置をわかりやすく
免税事業者のフリーランスが免税事業者となる場合、消費税を納税する義務が新たに発生します。
消費税額がゼロから急に10%増額されるのは厳しいものがあります。
そこで、一定期間フリーランス(小規模事業者)に対する負担軽減措置(2割特例)があります。
2割特例の消費税額の試算
2割特例
適格請求書で請求する場合、売上税額の8割を差し引いて納付税額を計算できます
フリーランスが支払う消費税は、「20000円」から2割の「4000円」に割引されます
2割特例の適用期間
2割特例適用できる期間:R5.10.01~R8.09.30
2割特例は、確定申告毎に合計4回申請できます
ただし、前々年の課税売上高が1000万円を下回っている条件で申請できます
詳しく知りたい場合は、下記を参照ください。
2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要:国税庁
4.インボイス制度で課税事業者登録をしないフリーランスの緩和措置をわかりやすく
フリーランスが免税事業者を続ける場合、取引先会社がその分の消費税を納税する義務が新たに発生します。
取引先会社にとってはフリーランスの消費税額分の負担追加は厳しいものがあります。
そこで、この場合も一定期間負担軽減措置があります。
緩和措置の消費税額の試算
免税事業者のフリーランスの売上に対する消費税額分の80%を控除して計算できます
取引先会社は、フリーランスの消費税分「20000円」から80%差し引き「4000円」だけを余分に支払えばよいです
緩和措置は2段階あり、80%控除に次に、50%控除も現段階で決められています。
緩和措置の適用期間
80%控除で計算できる期間:R5.10.1~R8.09.30
50%控除で計算できる期間:R8.10.1~R11.09.30
R11.10.1以降は控除がありません
詳しく知りたい場合は、下記を参照ください。
経過措置:国税庁
5.インボイス制度でフリーランスが行う処理をわかりやすく
ここから先は免税事業者から課税事業者になる方だけ読んでください。
免税事業者のフリーランスがする手続きを順に説明します。
概要
①まず始めに、課税事業者になるための登録をします。【手順1】
➁登録できたら、インボイス制度に適合した適格請求書を発行します。【手順2】
③発行した適格請求書は、発行側・受領側とも保存する必要があります。【手順3】
注記:インボイスは「適格請求書」のことで、適格請求書保存方式を「インボイス制度」と呼びます。
5-1.課税事業者への登録が必要【手順1】
インボイスの発行事業者となるためには、税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、「適格請求書発行事業者」となる必要があります。
インボイス制度の登録申請に必要な3つのステップ
STEP1:申請書の作成
申請書をダウンロードして作成します。
紙による申請書:国税庁専用サイト「申請書ダウンロード」
電子申請:国税庁専用サイト「電子申請のついて」
STEP2:国税庁に提出
申請書を国税庁へ提出します。
紙の場合は、管轄地区のインボイス登録センターへ送付します。
国税庁専用サイト「郵送による登録申請手続」
STEP3:取引先に通知
登録番号のお知らせを受け取ったら、取引先会社へ登録番号を連絡します。
5-2.インボイス制度に適した請求書などの発行が必要【手順2】
仕入税額控除に対応するためは、請求書・領収書・納品書・レシートが、適格請求書(インボイス)の要件を満たしている必要があります。
適格請求書には、国が認めた請求書で登録事業者の登録番号、消費税額を記載する必要があります。
適格請求書記載項目
1.請求書発行者の登録番号
2.税率ごとに区分した消費税額等
3.請求書発行者の氏名又は名称
4.取引年月日
5.取引内容
6.取引金額
7.請求書受領者の氏名又は名称
8.軽減税率の対象品目である旨
9.税率ごとに区分して合計した税抜または税込対価の額
特に、①➁の項目が追加されました。
5-3.発行側・受領側共に請求書の保存が必要【手順3】
インボイス制度とは、取引内容や消費税率&消費税額などの必要項目を記入して請求書等を発行し保存しておく制度です。
必要項目を記入した請求書を保存しておくと、取引先会社(仕入れ側)は消費税の仕入税額控除を受けられます。
そのため、インボイス制度開始後は発行側も受領側もインボイスを7年間保存する必要があります。
データとして保存する場合は電子帳簿保存法に対応する必要があるため、電子帳簿保存法に対応しておくことを推奨いたします。
*電子帳簿保存法について知りたい方は下記を参照ください。
2024年からの電子帳簿保存法に従い、個人事業主が最低限の労力で帳簿処理をするやり方!ムダが嫌いな人限定
6.インボイス制度でフリーランスが注意することをわかりやすく
最後に、インボイス制度で注意することをまとめました。
実際に運営を始めたら徐々に理解しながら確認をしていってください。
●インボイス制度の課税事業者登録申請をする。
●インボイス制度に登録すると、事務作業、経理作業が増えます。
●消費税の申告書を作成する義務と納税する義務が発生します。
●消費税の計算方法の選択をする必要があります。
状況に応じ、【2割特例】【簡易課税】【一般課税】の選択が必要です。
●消費税変更の場合、変更の申請の締切日やルールの確認が必要です。
7.まとめ
インボイス制度が始まり、「課税事業者になるべきか?」迷っている免税事業者のフリーランスの方に向けて!
課税事業者に登録すべきか否かを判断するのに必要な基礎知識をまとめました。
個人で活動しているフリーランスは、情報収集が大切です。
参考にしてもらえれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
極力正確に伝えるように心がけました。
足りない部分、適切でない部分、補足などが有りましたらご指摘等お願いいたします。
Copyright–Seiji Nakamura, 2023 All Rights Reserved.