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[ URL:seilog.org ] Writtern by Seiji Nakamura

2024/8/23 (更新日:2024/8/28)

三相誘導電動機の動作・特性を回転磁界、誘導起電力の原理から解説します【超初心者向け】

EV

三相誘導電動機という言葉はよく聞きますが動作を理解できていますか?

三相誘導電動機の動作を磁気と誘導起電力の関係にまでさかのぼり、根本的な原理を解説します。

初心者が一番最初に理解したほうが良い技術的な内容です。

その後、三相誘導電動機の特性・等価回路についても触れていきます。

私の大学での卒業論文テーマは「誘導電動機のベクトル制御」でしたので、誘導電動機については結構詳しいです。

誘導電動機についての理解が進めば幸せです。

目次

  1. 三相誘導電動機の動作・特性を回転磁界、誘導起電力の原理から解説
  2. 三相誘導電動機の回転磁界
  3. 三相誘導電動機における回転磁界による誘導電力と回転力
  4. 三相誘導電動機の特性
  5. 三相誘導電動機の等価回路
  6. まとめ

1.三相誘導電動機の動作・特性を回転磁界、誘導起電力の原理から解説

by volkerloebe pixabay
by volkerloebe pixabay

三相誘導電動機は交流で駆動されるモーターで、構造がシンプルのため堅牢で安価なモーターに分類されています。

しかし、体格はやや大きめの電動機です。

三相誘導電動機は、磁石を使わず、外部から交流電力を加えるだけで回すことができるのが特徴です。

三相誘導電動機は位相が120°づつズレている交流電力を三相に加えて(三相交流)回転する磁界(回転磁界)をつくりだします。

その回転磁界に引きずられて回転子(ローター)が回ります。

回転子側では、外部から加えられる磁界により電流が流れ(誘導起電力)、電磁力がはたらき回転力が発生します。

三相誘導電動機は、外部から加える電力の周波数と回転子の周波数に差(すべり)がある時に上記のようにトルクが発生し回転します。

” すべり ” と ” トルク ” には誘導電動機特有の関係が成り立っています。

最大トルクの右側の領域で使用するのが一般です。

三相誘導電動機な等価回路で表現することもできます。

続けて、細かい内容を解説していきます。

動作原理については、特に初心者の方に分かるように記述するように努めます。

最後まで目を通していただけたら幸いです。

2.三相誘導電動機の回転磁界

by geralt pixabay

三相誘導電動機概要構造

三相誘導電動機概要構造

モータ外枠の構造物に固定されている固定子(ステータ)に、三相の巻線が巻かれています。

三相は構造的に位相をずらして作ります。

外部から三相に交流電力が供給され、回転する磁束を生じます。[黃・緑・水色]

内側には、ローターと言われる回転子があります。

磁束が通る珪素鋼板とアルミバーもしくは銅線などの電流が流れる経路があります。[濃紺]

2-1. 誘導電動機各相の電流が作る磁束ベクトル

各相の電流が作る磁束ベクトル

各相の巻線は固定されているので、発生する磁束の方向は一定です。

各相の巻線は、120°ズラして巻くように作成してあります。

各相で作られる磁束ベクトルは、120°ズレた方向になります。

【 ポイント 】

三相の巻線は、構造的に位相120°ずつずらして作りますので、各相が作る磁束は必ず120°ずれています。

変化するのは、大きさと正負方向のみです。

2-2. 誘導電動機の各相に流れる電流

水色、黄色、緑色の巻線に流す電流波形を同じ色で表現します。

回転磁界を作るには、厳密に三相の位相を管理する必要があります。

各相に流れる電流

固定子の巻線には、それぞれ120°位相がずれた正弦波の電圧を印加します。

左図のように最大値が同じ正弦波の電流を流します。

【 ポイント 】

各相には、位相が120°ずれた同じ正弦波の電流波形を流します。

2-3. 誘導電動機の合成磁束ベクトルの移り変わり

各相に120°位相がズレている電流を流したときに、各相で発生する磁束を求めます。

各相の磁束を合成して合成磁束の変化を解析します。

①状態の山荘の磁束と合成磁束

水色電流は零。
黄色電流は負電流による磁束。
緑色電流は正電流による磁束。
合成磁束は左方向になります。

合成磁束ベクトルの変化

合成磁束ベクトルの移り変わり

時系列の変化に対して合成磁束ベクトル(赤矢印)の変化を同様に示しました。

①左 ⇒ ②上 ⇒ ③右 ⇒ ④下
⑤以降は繰り返し、となります。

時計回りに合成磁束ベクトルが回転しているのがわかります。

【 ポイント 】

三相の磁束ベクトルを合成して生成される磁束ベクトルは、磁束が回転しているような挙動となる。

3.三相誘導電動機における回転磁界による誘導起電力と回転力

by Peggy_Marco pixabay

誘導電動機は回転子に電流が流れる経路が存在しているので、ファラデーの法則で説明します。

独断ですが、一般的に使われている「アルゴの円板の原理」はわかりにくいと思いますので実際に即した回転原理の説明を試みます。

3-1. 誘導電動機の構造

誘導電動機には、カゴ型と巻線型の二種類あります。

どちらの構造でも、回転子には電流が流れる経路があります。

*ここでは、模式的に構造を説明していますが、詳細を確認するには実物もしくは実物の写真を参照してください。

カゴ型誘導電動機

回転子(ローター)の構造

電流が流れる経路として、銅もしくはアルミの導体の棒をカゴのように配置。

両端をエンドリング(短絡環)で電気的に接続して、電流が自由に流れる回路が形成されています。

カゴの内側は、珪素鋼板など磁束をとうしやすい材質で構成。

巻線型誘導電動機

回転子(ローター)の構造

絶縁銅線をロータ(珪素鋼板など)に巻いて、三相巻線にします。

三相巻線はスリップリングに接続します。

固定子(ステータ)側

スリップリングの電流はブラシを通して外部に接続されます。
可変抵抗に電気的に接続されてトルクの制御が可能になります。

誘導電動機は、回転子に電流が流れる経路が作られているので、

ファラデーの法則で考える。

3-2. 回転磁界による誘導起電力と回転力の原理

【 ポイント 】

導体が回転磁界の中に置かれていると、誘導起電力が発生します。

固定子の導線に発生する誘導起電力

ファラデーの右手の法則で考えると、

ここでは、磁束(赤矢印)が左から右方向に向いていて、
磁界が時計回りに回転(回転磁界)している状況です。

導体は相対的に、磁束が反時回り(黒矢印)に移動していることになります。

その結果、誘導起電力が手前方向(緑矢印)に発生します。

【 ポイント 】

誘導起電力により導体に電流が流れ、電流に電磁力が加わり回転力が発生します。

導体にかかる電磁力(回転力)

ファラデーの左手の法則で考えると、

誘導起電力により導体には、手前方向に電流(緑矢印)が流れます。

合成磁束は、左から右方向に向いています。(赤矢印)

その結果、導体には、上方向に電磁力(黒矢印)が加わります。

導体は、合成磁界の回転方向と同じ方向に回ります。

4.三相誘導電動機の特性

by Iangtufore09 pixabay

誘導電動機が回転するのが理解できたところで、特性について説明します。

固定子は、電機子鉄心・電機子巻線で構成されていて、三相交流電力により回転磁界が作られます。

その回転磁界の速度を、N1:磁束回転数とします。

回転子は、回転磁界に引きずられて回転します。

その回転子の速度を、N2:モータ回転数とします。

回転数差が生じている状態を、すべりが生じていると言います。

すべりを、” S ” で表現します。

誘導電動機において、トルクが出ているときは、「N1 > N2」となります。

*トルクを発生するためには、ローターの導体に相対的に速度を持った磁束が加わる必要があるので、N1がN2より大きい必要があります。

すべりとモータの出力トルクには、一定の関係が成立します。

負荷特性とトルク特性が交わる動作点で、モータは回転することとなります。

すべり ‐ トルク特性

「すべり ‐ トルク特性」です。

最大トルクより左は、トルクはすべりにほぼ反比例

最大トルクより右は、トルクはすべりにほぼ比例です。

誘導電動機を安定して運転するには、一般的に最大トルクの右で運転します。

負荷線と誘導電動機のトルクが動作点で安定するように作用します。

5.三相誘導電動機の等価回路

by geralt pixabay

誘導電動機を等価回路で表示します。

少し専門的なので、必要に応じて参照してください。

固定子と回転子が独立した等価回路

一次側が、固定子に相当します。

二次側が、回転子に相当します。

固定子と回転子が独立した等価回路

励磁回路の「 g0 , b0 」については、固定子で磁束を発生させるための要素です。

一次側の磁束により、二次側では誘導起電力 E2 が生じる関係になります。

二次側では、

r2は、回転子の銅損に相当する項目です。

r0は、モーターの出力に相当する項目です。

電力の流れを表現すると、下記になります。

二次入力電力:二次銅損:出力 = 1:s:1 – s

回転子側を固定子側に換算した等価回路(T型等価回路)

固定子と回転子は磁気的に結合しています。

その結果モーターが回転していることになります。

そこで、回転子回路を固定子回路に接続して等価回路を書き直します。

E1 : 一次誘導起電力 = a(係数) × E2 : 二次誘導起電力


の関係が成り立つ場合

回転子側を固定子側に換算した等価回路(T型等価回路)

aV2: 二次端子電圧の一次側換算値[V]
I’1=I2: 二次電流の一次側換算値[A]
aE2: 二次誘導起電力の一次側換算値[V]
r2’=a2r2: 二次抵抗の一次側換算値[Ω]
X2’=a2x2: 二次リアクタンスの一次側換算値[Ω]
R0=a2ro: 等価出力抵抗の一次側換算値[Ω]
s: すべり

回転子側を固定子側に換算した等価回路(L型等価回路)

T型等価回路で、励磁電流 I0 は小さいので、

I1 ≒ I’1 とみなせます。

また、一次インピーダンス Z = r1 + jx1 も小さいので、

電源 V1 に比べて、一次インピーダンスの電圧降下 Z×I’1 も小さいとみなせます。

従って、励磁回路を電源 V1 部分に移動して考えたのが、L型等価回路です。

回転子側を固定子側に換算した等価回路(L型等価回路)

三相誘導電動機の詳細を検討していく時に、T型等価回路やL型等価回路で解析することがあると思います。

理解の一助にしてください。

6.まとめ

by geralt pixabay

三相誘導電動機の原理・構造・等価回路について解説しました。

参考にしてもらえれば幸いです。

*三相同期電動機については、下記を参照ください。
電気自動車にも使われている永久磁石を使った三相同期電動機の原理からベクトル図まで【初心者用】

最後まで読んでいただきありがとうございます。

説明できる内容は限られていますが、極力正確に伝えるように心がけました。

足りない部分、適切でない部分、補足などが有りましたらご指摘等お願いいたします。

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