2024/10/1 (更新日:2024/10/1)
直流電動機の動作を原理から解説します。直流電動機の種類と等価回路も紹介します【初心者向け】
よく知られている直流電動機の動作原理を理解できていますか?
初心者がわかるように直流電動機の動作原理の解説をいたします。
また、電機子反作用が発生するメカニズムと電機子反作用が及ぼす影響についても説明します。
最後に直流電動機の主な種類と等価回路についても紹介いたします。
目次
- 直流電動機の動作を原理から解説します。種類と等価回路も紹介します
- 直流電動機が回転する原理(回転力)
- 直流電動機の電機子反作用
- 直流電動機の等価回路と特性
1.直流電動機の動作を原理から解説します。種類と等価回路も紹介します
直流電動機は直流の電源で回転する電動機です。
直流電動機の構成
界磁(固定子)
本体に固定されていて、安定した磁界を供給します。
永久磁石や外部から電流を供給する磁界を作る電磁石で構成されています。
電機子(回転体)
回転する電機子巻線・整流子と、
固定されているブラシ・電源から構成されます。
電機子巻線と整流子は回転し、ブラシと電気回路は外部に固定されています。
界磁で一方向の安定した磁界を作ります。
磁界中の電機子巻線に直流の電流を流します。
電機子巻線に流される電流は整流子とブラシにより、電流方向を周期的に切り替えられます。
切り替えることにより、電機子巻線に安定して回転する力が与えられます。
その結果、回転力が発生して回転します。
2.直流電動機が回転する原理(回転力)
回転する原理を説明します。
界磁を下図のようにN極、S極を固定して説明します。
磁束は、左から右方向に磁束をつくります。
電機子回路で流れる電流は、一方向です。
ブラシと整流子により、電機子巻線に流れる電流の方向を切り替えます。
常に、図中左側では手前方向に、図中右側では奥の方向に電流が流れます。
回転する力の関係
図中左側の説明
磁束が右方向にあります。
電機子巻線では、手前方向に電流が流れています。
フレミングの左手の法則で考えると、電磁力は上方向になります。
時計回りに回転するように回転力が加わっています。
図中右側の説明
図中左側に対して、電流が流れる方向が逆になります。
電機子巻線での、電磁力は下方向になります。
同様に、時計回りに回るように回転力が加わっています。
3.直流電動機の電機子反作用
この章では、直流電動機特有の現象を説明します。
直流電動機の場合、電機子が回転する時に、電機子反作用が磁束に影響を及ぼします。
電機子反作用とは、界磁による磁束と、電機子巻線に流れる電機子電流による磁束の合成によって起こる現象です。
3-1 誘導起電力の発生
電機子反作用を電機子が時計回りに回転している状態で以下で説明していきます。
(=モーターが時計回りに回転)
電機子巻線は、磁束に対しては相対的に反時計回りに移動していることになります。
図中左側の説明
磁束が右方向
導体が下方向に移動している
フレミングの右手の法則を考えると、誘導起電力が奥方向に発生します。
図中右側の説明
磁束が右方向
導体が上方向に移動している
誘導起電力が手前方向に発生しています。
3-2 誘導起電力により発生する磁束
導体に生じた誘導起電力により発生する磁束を検討します。
誘導起電力により導体に電流が流れます。
その電流のまわりには環状の磁界が発生します。
ここでは、右ねじの法則(アンペールの法則)で考えます。
図中左側の説明
誘導起電力による電流が奥方向に流れます。
右ねじの法則にしたがって、電流が流れる巻線を中心に環状に図の方向に磁界が発生します。
図の濃紺の矢印のように、電機子巻線の回りに磁束が発生します。
磁束に垂直に流れる電流で磁束が発生しますが、平行に流れている電流では磁束は発生しません。
図中右側の説明
誘導起電力による電流が手前方向に流れます。
左側と流れる電流が逆方向ですので、磁束の発生方向も逆になっています。
3-3 電機子反作用と界磁磁束の関係
誘導起電力により生じた磁束が及ぼす影響を、電機子反作用といいます。
磁界を縦に輪切りした図で説明します。
巻線の回りには、界磁により発生した磁束と、誘導起電力により作られた磁束が存在します。
合成された磁束を、赤矢印で表示します。
A領域(左側巻線の上部)
界磁の磁束と、誘導起電力で生じる磁束が同方向です。
合成された磁束は界磁より大きくなります。
「磁束を強めあう領域」です。
B領域(左側巻線の下部)
界磁の磁束と、誘導起電力で生じる磁束が逆方向です。
合成された磁束は界磁より小さくなります。
「磁束を弱めあう領域」です。
C領域(右側巻線の上部)
合成された磁束は界磁より小さくなります。
「磁束を弱めあう領域」です。
D領域(右側巻線の下部)
合成された磁束は界磁より大きくなります。
「磁束を強めあう領域」です。
3-4 電機子反作用による悪影響
電機子反作用の影響を整理します。
電機子反作用とは、界磁による磁束と、電機子電流による磁束の合成によって起こる現象でした。
整流子とブラシの切り替えタイミングで電機子巻線に起電力が発生してしまう現象のことです。
(1)磁束が減少する。
界磁でも電機子でも、磁束が通りやすいように磁路が作られています。
しかし、磁路に流せる磁束量は物理的に制約があり、その値を超えると磁束量が飽和します。
「磁束を強めあう領域」では、最大値付近の磁束が飽和して削られることになります。
「磁束を弱めあう領域」では、磁束が弱まっています。
したがって、全体の磁束量が減少することになります。
入力に対して効率が悪くなります。
(2)磁束の分布がずれる
電機子反作用により磁束の分布は偏りが生じます。
直流電動機は、整流子で電機子電流が流れる向きを変えることで回転しています。
磁束の分布が偏るため、磁束がまだ残っている状態で、整流子で電流方向を切り替えることになります。
そのため、整流子片にアークが飛んだり、火花が生じたりする可能性が生じます。
3-5 電機子反作用対策
整流子部分で電流方向を切り替えるタイミングを正規な状態に維持する対策をするのが一般的です。
花火が生じたりアークが飛んだりしないように、タイミングを調整することです。
(1)ブラシの位置の移動
火花が生じないように電機子反作用による磁束の偏りにあわせてずらします。
整流子とブラシが接触する角度を調整して、電流が流れるタイミングを調整しています。
(2)補償巻線の設置
電機子反作用で流れる電流を打ち消すように、別に巻線( = 補償巻線 ) を組み込みます。
本来の界磁による磁束のみを残すのが目的です。
電機子巻線に流れる電機子電流による磁束(起磁力)を打ち消すもので、固定子磁極のエアギャップ(空気絶縁部分)に面した部分に設けられます。
(3)補極の設置
固定子の磁極の間に別に磁極を設置して、磁束の歪みを改善するものです。
補償巻線同様、電機子反作用を予測して、生じる余分な磁束を補正するための磁極を予め組みます。
4.直流電動機の等価回路と特性
4-1 直流電動機の種類
電気の供給方法によりいくつかの種類があります。
外部からの電気の供給方法で分類されています。
直流電動機の分類・種類
実体配線例(他励式直流電動機)
4-2 直流電動機の等価回路
直流電動機の等価回路と関係式を並べます。
関係式から、各々の特性を推測できます。
(1) 他励式直流電動機
他励式直流電動機の等価回路
関係式
Ea = V -ra×Ia
If = Ef / rf
Ia = I
Ef :外部電源電圧
If :界磁電流
rf :界磁抵抗
Ea :誘導起電力
Ia :電機子電流
ra :電機子抵抗
V :端子電圧
I :負荷電流
(2) 自励分巻式直流電動機
自励分巻式直流電動機の等価回路
関係式
If = V / rf
Ea = V -ra×Ia
Ia = I – If
(3) 自励直巻式直流電動機
自励直巻式直流電動機の等価回路
関係式
Ea = V -(ra + rf)×Ia
Ia = I = If
4-3 直流電動機の特徴
(1)前提になる公式
誘導起電力の公式
電動機のトルクの公式
(2)直流電動機の特性
2つの公式から自励分巻直流電動機と自励直巻直流電動機の特性を求めます。
自励分巻式直流電動機
等価回路
負荷電流と回転速度の関係式
N(rpm)=Ea/(K1×Φ) = (V-ra×Ia)/(K1×Φ)
= {V-ra×( I-If )} /(K1×Φ)
= (V+ra×If ) / (K1×Φ) – ra×I /(K1×Φ)
負荷電流とトルクの関係式
T(N・m)=K2×Φ×Ia
自励分巻式直流電動機特性
自励直巻直流電動機
等価回路
I = Ia = If
Φ = N×I / Rm = Km×I
負荷電流と回転速度の関係式
N(rpm)=Ea / (K1×Φ) = {V – (ra+rf)×Ia} / (K1×Φ)
= V/(K1×Φ) – (ra+rf) ×Ia / (K1×Φ)
=V/(K1×Km×I) – {(ra+rf)/( K1×Km×I)} ×Ia
=V/(K1×Km×I ) – (ra+rf)/( K1×Km)
負荷電流とトルクの関係式
T(N・m) = K2×Φ×Ia= K2×Φ×I
自励直巻直流電動機特性
5.まとめ
直流電動機の原理・構造・等価回路について解説しました。
どれも基本的な内容ですので、直流電動機を理解するうえで大切だと思います。
参考にしてもらえれば幸いです。
*三相同期電動機については、下記を参照ください。
電気自動車にも使われている永久磁石を使った三相同期電動機の原理からベクトル図まで【初心者用】
*三相誘導電動機については、下記を参照ください。
三相誘導電動機の動作・特性を回転磁界、誘導起電力の原理から解説します【超初心者向け】
最後まで読んでいただきありがとうございます。
説明できる内容は限られていますが、極力正確に伝えるように心がけました。
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