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[ URL:seilog.org ] Writtern by Seiji Nakamura

2025/1/1 (更新日:2025/1/1)

事故や廃棄物処理などの問題がある原子力発電ですが自分で判断できるために仕組みを理解することから始めましょう

by Yamu_Jay pixabay

何かこわいものと言うイメージが有る原子力発電ですが、その仕組を知っていますか?

ここでは、日本で使われている原子力発電の仕組みの基礎的な内容を解説しました。

原子力発電の仕組みを正しく理解することが議論するための第一歩と思いまとめました。

ぜひ一読ください。

目次

  1. 事故や廃棄物処理などの問題がある原子力発電の仕組み
  2. 原子力発電を産み出す核分裂の仕組み
  3. 日本の原子力発電:沸騰型軽水炉の仕組み
  4. 日本の原子力発電:加圧水型軽水炉の仕組み

1.事故や廃棄物処理などの問題がある原子力発電の仕組み

原子力発電の仕組み
by geralt pixabay

原子力発電の特徴

1-1.熱効率

火力発電に比べて、蒸気が低温・低圧のため熱効率が低い。
約35%程度(目安)

1-2.メリット

(1)地球温暖化の原因になるCO2を発生しない。

(2)大気汚染の原因になる窒素化合物NOxを排出しない。

1-3.デメリット

(1)放射性廃棄物の処理が難しい。

 - 埋設処分して経年による影響減少を待つしか技術的に現実解が存在しない。

(2)事故が発生した場合、周辺地域に及ぼす悪影響が甚大

 - 大気を伝わり人体に影響を及ぼす

 - 大気の放射能は経年による影響減少を待つしかない。

デメリットになる悪影響に対して、現在の技術では対策がないことが大きな問題と思います。

対策がないということは、未完成の技術とも言えると思います。

その状態で得られるメリットを追求して使っているのが現在です。

原子力発電を使っていくのか判断するのは我々個人で判断していかないといけないと思います。

それでは、原子力発電について内容を説明していきます。

2.原子力発電を産み出す核分裂の仕組み

核分裂
by geralt pixabay

原子力発電の燃料:核燃料としてウランが使われます。

ウランにはウラン234、ウラン235、ウラン238の3種類がありますが、ウラン235が使われます。

原子力発電は、ウラン235の核分裂により発生する熱により発電する方式です。

STEP1:ウラン235の原子核に中性子を衝突させると、原子核は中性子を跳ね返す(散乱)か吸収します。

STEP2中性子を吸収した原子核は、中性子を取り込む状態(捕獲)になるか2つの原子核に分裂します。

原子核が複数の原子核に分裂する現象を核分裂といいます。

STEP3:核分裂するとき、大きな熱エネルギーと2~3個の中性子を発生します。

この熱エネルギーを核分裂エネルギーと言い、質量欠損から具体的なエネルギー量が求められます。

このとき生じる質量欠損については、ここをクリックして参照してください。

分裂前の原子核の質量と、分裂後の複数の原子核と高速中性子の質量の総和を比較すると、分裂後の質量のほうがわずかに少なくなります。この質量差を質量欠損といいます。

E(J):核分裂エネルギー = m(kg)【質量欠損】×c2(m/s)【光速の二乗】

c=3×108m/s

原子力発電では、この熱エネルギーを使って発電します。

核分裂のメカニズム

核分裂のメカニズム

STEP4:放出された中性子は、引き続き別のウラン235に当たって核分裂を起こします。

このように次々と核分裂反応が持続されていく現象を「核分裂の連鎖反応」といいます。

原子力発電では、ウラン235の含有量を人工的に3%程度まで高めた低濃縮ウランを核燃料とすることで連鎖反応を継続させています。

3.日本の原子力発電:沸騰型軽水炉(BWR)の仕組み

沸騰型軽水炉(BWR)
by nedu503 pixabay

原子炉で直接水を加熱し蒸気を発生させてタービンを回して発電するタイプの軽水炉(原子炉)です。

原子炉圧力容器内で、核分裂で生じる熱エネルギーにより、軽水が加熱され蒸気となります。

その蒸気がタービンに送られ回転力に変換されて、発電機を回して電気に変換されます。

タービンを回した蒸気は、復水器で水に戻され再利用されます。

制御棒で核分裂の発生を抑制し、再循環ポンプで水の流量を調整します。

圧力抑制プールは、圧力容器から格納容器に漏れた蒸気を凝縮して水にして格納容器内圧を抑制するための設備です。

沸騰型軽水炉(BWR)

沸騰型軽水炉(BWR)

沸騰型軽水炉(BWR)の特徴

(1)原子炉で発生した蒸気で直接タービンを回すので、タービン・復水器などをに遮蔽対策が必要

(2)制御棒、再循環ポンプで核分裂を調整する。

(3)圧力抑制プールで、原子炉格納容器の内圧調整をしている。

用語の説明

ウラン燃料:ウラン235の含有量を約3%程度まで高めた低濃縮ウランなどを棒状の管に封入した核燃料

制御棒:原子炉内の中性子を吸収することで核分裂を抑制する棒。抑制時は挿入し、促進時は引き抜きます。材質は、ホウ素、カドミウムなど

減速材:中性子を減速させるためのもの。高速中性子を減速して低速中性子にすることで核分裂を促進します。材質は、軽水、重水など

冷却材(水):熱エネルギーを取り出し、かつ原子炉を冷却します。材質は、中性子の吸収が少なく熱伝導率の大きい軽水、重水など

遮蔽材(原子炉圧力容器、原子炉格納容器、原子炉建屋):核分裂時に発生する放射線は有害なので、放射線が外部に漏れないようにするもの。材質は、コンクリート、鉛、鉄など

4.日本の原子力発電:加圧水型軽水炉(PWR)の仕組み

加圧水型軽水炉(PWR)
by Yamu_Jay pixabay

原子炉圧力容器内で、核分裂で生じる熱エネルギーにより、高温高圧の熱水を発生させます。

その熱水により蒸気発生器で蒸気を発生させてタービンを回して発電するタイプの軽水炉(原子炉)です。

沸騰型軽水炉(BWR)との大きな違いは、放射性物質がタービン側には入らず、圧力容器内に閉じ込められることです。

その他は同様で、蒸気がタービンに送られ回転力に変換されて、発電機を回して電気に変換され、蒸気は、復水器で水に戻され再利用されます。

加圧器は、圧力容器内の圧力を高めて、沸点を高めて沸騰することなく高温高圧の熱水を循環させます。

蒸気発生器は、一次側の圧力容器内の熱水で二次側のタービンを回すための蒸気を発生させる容器です。沸騰型軽水炉(BWR)との大きな違いが、一次側と二次側の軽水が分離しているところです。放射性物質を含んだ軽水がタービンや復水器を汚染することがありません。

加圧水型軽水炉(PWR)

加圧水型軽水炉(PWR)

加圧水型軽水炉(PWR)の特徴

(1)タービンや復水器が放射性物質に汚染されない。

(2)熱効率が若干低い。

(3)原子炉の敷地が小さい。

(4)加圧器、蒸気発生器などの特有の装置が必要。

(5)加圧機を使用するので、原子炉内の圧力が高い。

(6)出力制御を、制御棒とホウ素濃度の調整でおこなう。

< よく聞く言葉の豆知識 >

燃料デブリとは、(TEPCO HP の回答から引用)

2011年3月の事故当時、1号機から3号機は運転中で、原子炉内に燃料がありました。地震直後に原子炉は自動停止したものの、停止後も膨大な熱を発生する燃料を冷やすための設備および電源が津波によって失われたため、燃料が過熱し原子炉内の構造物と燃料が溶けました。その溶けた燃料等が冷えて固まったものを燃料デブリと言います。

5.まとめ

まとめ
by geralt pixabay

原子力発電についてまとめました。

良いところも悪いところも併せ持つ発電方法です。

自ら原子力発電の仕組みを理解して活用法の考えを発信するのは大切だと考えます。

参考にしてもらえれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

説明できる内容は限られていますが、極力正確に伝えるように心がけました。

足りない部分、適切でない部分、補足などが有りましたらご指摘等お願いいたします。

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