2025/2/1 (更新日:2025/2/1)
再生可能エネルギーを使った太陽光発電の発電原理と家庭用太陽光発電で知っておきたいこと【初心者用】
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再生可能エネルギーを使った発電方式である太陽光発電の仕組みはご存知でしょうか?
太陽光を電気に変換する原理、その電気を家庭で使用したり電力会社の送電線に接続したりする仕組みを解説します。
再生可能エネルギーを活用していくことに少しでもつながれば幸いです。
目次
- 太陽光発電の発電原理と家庭用太陽光発電で知っておきたいこと
- 太陽光発電の仕組み
- 法規と技術基準
1.太陽光発電の発電原理と家庭用太陽光発電で知っておきたいこと
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太陽の光を電気に変換する機能がある素子*1を使い、光を電気に変換して発電する方式です。
素子*1:太陽電池といいますが、素子自体には電気を貯める機能はありません。
1-1. 効率
太陽光があたっている間でしか発電できないので発電効率で表現が難しいですが、素子の変換効率で表現すると、
太陽電池の変換効率:最大約20%(目安)
*太陽光の光エネルギーの15%~20%が電気エネルギーに変換できます。
1-2. メリット
(1) 太陽光なので資源が枯渇することなく、永続的に利用できます。
(2) 発電時に二酸化炭素を発生しないクリーンなエネルギーです。
(3) 化石燃料の輸入量を減らし、エネルギーの自国自給率が向上しエネルギーセキュリティも向上します。
(4) 新たな産業分野なので、新たに雇用の創出や地域経済の活性化が推進される可能性があります。
1-3. 課題
(1) 新たな施設の導入や運用に高いコストが必要になります。
(2) 昼間しか発電できず、また天候の影響も受けるため電力の供給が安定しません。
(3) 設備導入には広大な土地が必要なため地域でのトラブルが生じる可能性があります。
2.太陽光発電の仕組み
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光で発電する素子に太陽光をあてることにより、光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電方式です。
発電により直流が発電されます。
2-1. 太陽光から電気を発電する仕組み
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太陽電池の構造
太陽電池の構造は、n形半導体とp形半導体を接合した半導体を電極で挟み込んだ構造です。
両電極を電線で結ぶことで、太陽電池で発電された電気を取り出すことが出来ます。
*反射防止膜は、取り込んだ太陽光が外部に逃げるのを防止する膜です。
2-2. 太陽電池の発電原理
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太陽電池でどのように発電して、電気がどのように流れるか、そのメカニズムを解説します。
2-2-1. 初期状態では、
n形半導体には、負の電荷の自由電子が多数存在しています。
同様に、p形半導体には、正の電荷の正孔が多数存在しています。
*自由電子、正孔は電気を流すことに寄与するのでキャリアと呼ばれます。
2-2-2. n形半導体とp形半導体を接合すると part1
初めは、自由電子が活動を始めます。
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n形半導体とp形半導体を接合すると、
境界面では拡散現象により、
n形半導体の自由電子はp形半導体へ移動します。
p形半導体の正孔はn形半導体へ移動します。
2-2-3. n形半導体とp形半導体を接合すると part2
最終的に、接合部分で電気的な安定状態になります。
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境界面付近では、自由電子と正孔が結合し、キャリアが無い空乏層という領域になります。
n形半導体側では、正孔が過剰に存在し、正に帯電します。
p形半導体側では、自由電子が過剰に存在し、負に帯電します。
空乏層に、内蔵電界が発生します。
2-2-4. 安定状態の半導体に太陽光をあてると、
光エネルギーにより発電を始めます。
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光エネルギーにより、空乏層に自由電子と正孔が発生します。
自由電子と正孔は、内蔵電界により、
自由電子は、n形半導体へ移動し、n形半導体は負に帯電します。
正孔は、p形半導体へ移動し、p形半導体は正に帯電します。
その結果、n形半導体とp形半導体の間に起電力が発生します。
そこで、端子間を電線で結ぶと電流が流れます。
2-3. 太陽光発電システム
太陽電池では直流で発電されるため、家庭の電気機器で使用するには交流に変換する必要があります。
また、太陽光に依存しているため、昼の間しか発電ができません。
そのため、太陽電池で発電したエネルギーを活用するには専用のシステムが必要です。
システムの2つの大分類
独立型システム:発電したエネルギーを限られた範囲(ex.家庭)で独立して使用する
系統連系型システム:発電したエネルギーを電力会社の電力系統にも接続して利用する
2-3-1. 独立型システム
負荷に供給する電力を、すべて太陽光発電から供給する独立したシステムです。
外部との電気的な接続がありません。
交流負荷用と直流負荷用の2種類があります。
(1) 交流負荷の場合
家電用品、例えばテレビや冷蔵庫など、を負荷にする場合は、太陽電池で発電した直流電力を交流電力に変換して使用します。
昼夜、天候にかかわらず使用できるように、発電できるときに蓄電池に充電するシステムです。
予算の関係などで、使い方により蓄電池を省く場合もありますが、その場合は発電している昼間しか使えません。
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交流負荷用の独立型システム
【用語の説明】
セル:太陽電池のセル。
モジュール:太陽電池のセルを直列・並列接続して必要な電圧・電流が取り出せる様に構成。セルの集まりと安全をコントロールする制御装置などとまとめてケースに一体化したモジュール。
DCDCコンバーター:太陽電池で発電した電力を蓄電池に無駄なく充電する装置。電圧、充放電量をコントロールして、太陽電池の直流電力から蓄電池の直流電力に変換します。
蓄電池:発電して電力を蓄えておきます。発電ができない夜間や雨天のときに蓄えたエネルギーで負荷を作動させます。リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池などが使われています。
インバーター:直流電力を交流電力に変換する装置
交流負荷:交流で動作する電子機器。太陽光発電を電源にして動作するものを負荷と表現している。
(2) 直流負荷の場合
直流で動作する電気機器、例えばポンプ用のモーターなど、を負荷にする場合は、太陽電池で発電した直流電力を負荷に適した直流電力に変換して使用します。
蓄電池は必要に応じて設置します。蓄電池を使わない場合は、DCDCコンバーターも1台で対応できるため予算が削減できます。
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直流負荷用の独立型システム
【用語の説明】
直流負荷:直流で動作する電子機器。太陽光発電を電源にして動作するものを負荷と表現している。
2-3-2. 系統連系型システム
太陽光発電した電力と、電力会社が運営する外部の電力系統と接続しているシステムです。
(1) 電力会社へ発電した電力を売電するシステム
太陽光発電した電力を自分で消費してから、その後に余った電力を電力会社に売電するシステムです。
場合によっては、発電した電力をすべて売電することもあります。
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売電する系統連系型システム
【用語の説明】
接続箱:パワーコンディショナーへ供給する電力の逆流などを防ぐ保護機能を備えた装置
パワーコンディショナー:①太陽光発電から出力される直流電力を交流に変換して、家庭用の交流負荷に供給する機能。②太陽光発電の不具合等が公共の電源系に悪影響を及ぼさないような系統保護機能。
分電盤:①太陽光発電システムと系統電源系をつなげる役目。②パワーコンディショナーの出力電力を分配する機能がありブレーカーなどを内蔵。
電力量計:電力使用量を計測する装置
公共の交流電源系:電力会社が運営する電力系統
(2) 電力会社へ売電しないシステム
太陽光発電した電力はすべて自分が消費して、不足した電力を電力会社から購入して補うシステムです。
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売電しない系統連系型システム
ワンポイント知識は、下をクリックしてください。
太陽電池を施設するときの決まり事
1. 太陽電池発電設備に特化した技術基準として、「発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令」=「太技」があります。
2. 太陽電池の絶縁破壊試験
最大使用電圧(太陽電池の発電電圧)の1.5倍の直流電圧を端子と大地との間に連続して10分間加えたとき、絶縁破壊がないこと
3.法規と技術基準
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太陽光発電を設備導入する個人の家庭が増えてきています。
また、太陽光発電を個人で小規模事業化するのも行われています。
太陽光発電に関する法規や技術基準も、太陽光発電を導入する側にも優しくなっているようです。
内容については説明しきれないので、参照できる情報を掲載しておきます。
3-1. 参照のサイト
法令検索(行政サービスや施策に関する情報案内)
経済産業省のサイト
発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令及び発電用風力設備に関する技術基準を定める省令の一部を改正する省令等について
*法規ではありませんが、太陽光発電導入の一助になりますので掲載します。
環境省が実施しているサポートに関するサイト
4.まとめ
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太陽光発電の基礎について解説しました。
再生可能エネルギーの太陽光発電とどの様に付き合っていくのか、考えるきっかけになれば幸いです。
*近々の太陽光発電の状況については、国立研究開発法人:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の情報が参考になりますので、興味がある方は下記のサイトを参照ください。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
説明できる内容は限られていますが、極力正確に伝えるように心がけました。
足りない部分、適切でない部分、補足などが有りましたらご指摘等お願いいたします。
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