2021/5/5 (更新日:2021/5/5)
エンジンとモーターを動力源に持つシリーズパラレル方式のハイブリッドの動作理論を共線図を使って理解しましょう【SDGs】
トヨタやホンダでも採用されているシリーズパラレル方式の動作を理解できますか?
エンジンとモーターの動力を分割する動力分割機構の共線図を使ってハイブリッドの動作を説明します。
筆者は、長年ハイブリッドの開発に携わっていますので実感として説明いたします。
最近は一級整備士の試験にも出題されて一般的になっています。
はじめての人には少々むずかしい内容ですが、挑戦してみてください。
目次
1.シリーズパラレル式のハイブリッドの構成
2.シリーズパラレル式の動力分割機構と共線図
3.シリーズパラレル式の動力分割機構の基本式
4.シリーズパラレル式のエネルギー保存
5.シリーズパラレル式のそれぞれの動作
6.まとめ
エンジンとモーターを動力源に持つシリーズパラレル方式のハイブリッドの動作理論を共線図を使って理解しましょう【SDGs】
1.シリーズパラレル式のハイブリッドの構成
エンジンとモーターを動力源に持つシリーズパラレル式ハイブリッドの構成です。
動作が理解できるように構成も少しづつ分解していきます。
システム全体の構成
要素
●動力源のエンジン
●動力源のモーター
●エンジン出力で発電するジェネレータ
●3入力の動力を分割して出力する動力分割機構
●エネルギー蓄電のバッテリ
●その他の部品(インバータ、燃料)
動力分割機構と動力源の構成
要素の関係
●動力分割機構のギヤへ
エンジン、
モーター、
ジェネレータ
を接続
●モーターが出力に接続
動力分割機構
動力分割機構
⇒プラネタリギヤを使用
●サンギヤ=ジェネレータ
●キャリア=エンジン
●リングギヤ=モータ=出力
出力の制御
①モータで出力駆動力を制御
②サンギヤ×キャリアでリングギヤを制御できる
=エンジンとジェネレータで出力制御
2.シリーズパラレル式の動力分割機構と共線図
システムの関係を共線図であらわします。
3つの歯車(サンギア、ピニオンギア(キャリア)、リングギア)の回転速度を視覚的にわかりやすく表現するために「共線図」が用いられます
必ず共線図は直線になります。
共線図からハイブリッド車の動作を理解しましょう。
プラネタリギヤ
共線図
3.シリーズパラレル式の動力分割機構の基本式
ng:ジェネレータ回転数
ne:エンジン回転数
nr:リングギヤ(モータ)回転数
ギヤ比ρ
= サンギヤ歯数 / リングギヤ歯車
歯車の基本方程式
nr – ne = – ρ ( ng – ne )
変換すると
ρ × ng + nr = ( 1 + ρ ) × ne ←【1式】
Tg:ジェネレータトルク
Te:エンジントルク
Tr:リングギヤトルク
ギヤ比ρ
= サンギヤ歯数 / リングギヤ歯車
= サンギヤ半径 / リングギヤ半径
Tg = ( ρ / ( 1 + ρ ) ) × Te ←【2式】
Tr = ( 1 / ( 1 + ρ ) ) × Te ←【3式】
プラネタリギヤのはたらきはある程度理解されているのを前提で説明します。
*プラネタリギヤについては一般の技術書を参照ください。
4.シリーズパラレル式のエネルギー保存
定常走行ではエンジン出力だけで走行する状態が実現します。
このときはバッテリからのエネルギーが使われていません。
*簡単のために各部位での損失は無視して、効率100%で考えます。
4-1. 定常走行
出力軸について考えるため、
出力軸の回転数=n_out
出力軸のトルク=T_out
としてエネルギーを計算します。
出力軸の出力=リングギヤの出力+モータ出力
n_out × T_out = nr × Tr + nm × Tm ←【4式】
リングギヤの出力は、【3式】を代入し、
nr × Tr = nr × ( 1 / ( 1 + ρ ) ) × Te ←【5式】
バッテリの電気は使わないので、
ジェネレータの発電電力 = モータ出力
【2式】を代入し、
nm × Tm = ng × Tg = ng × ( ρ / ( 1 + ρ ) ) × Te ←【6式】
【4式】に【5式】【6式】を代入すると、
n_out × T_out
= nr × ( 1 / ( 1 + ρ ) ) × Te + ng × ( ρ / ( 1 + ρ ) ) × Te
= ( nr + ρ × ng ) / ( 1 + ρ ) × Te
= ne × Te
n_out × T_out = ne × Te
結論:エンジン出力と出力軸の出力が等しい
エンジン出力のエネルギーで定常走行できることがわかりました。
5.シリーズパラレル式のそれぞれの動作
5-1. エンジン停止
エンジン、ジェネレータ、モータが停止している状態です。
5-2. EV走行 = 発進
モータのみで走行します。
エンジンは停止したまま零速です。
5-3. エンジン始動
ジェネレータが通常のスタータの機能を果たします。
ジェネレータが回転して、エンジン回転数を引き上げます。
エンジンが始動できる回転数に達すると、エンジンが点火されエンジンからパワーが出力します。
エンジンパワーが出力されるとジェネレータから発電します。
そのエネルギーは、バッテリに充電されるか走行に使われます。
この図は停止からのエンジン始動ですが、EV走行中も同じ方法でエンジン始動できます。
5-4. 加速走行
定常走行から加速する状態です。
エンジン出力を増加し、その分ジェネレータで発電量を増加します。
ジェネレータで発電した電気でモータに駆動力を発生させて加速します。
より大きな加速をしたいときは、
バッテリに蓄えられている電気を使って
モータの駆動力を増やして
加速を行ないます。
*ハイブリッドの原理については、こちらの記事を参照ください。
動力源がエンジンとモーターのハイブリッドが燃費が良くて地球に優しい乗り物である原理をお話します【SDG’s】
*ハイブリッドの動作については、こちらの記事を参照ください。
エンジンとモーターを動力源に持つハイブリッド自動車の代表的な3つのシステム構成と動作をお話します。【SDGs】
6.まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
シリーズパラレル式のハイブリッドの動作を説明しました。
自分なりにわかりやすく説明したつもりです。
しかし適切ではないところがあるかもしれません。
足りない部分、間違っている部分などが有りましたらご指摘をお願いいたします。
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