2024/7/31 (更新日:2024/8/23)
電気自動車にも使われている永久磁石を使った三相同期電動機の原理からベクトル図まで【初心者用】
電気自動車にも使われている三相同期電動機についてどれだけ理解できていますか?
交流で回る電動機ということは知っていますが、それ以上はわからない方がほとんどではないでしょうか。
三相同期電動機のどうしても知っておきたい基本の原理・構造・等価回路・ベクトル図について解説します。
目次
- 三相同期電動機の原理図と構成
- 三相同期電動機の動作原理
- 三相同期電動機の電機子反作用
- 三相同期電動機の等価回路とベクトル図
1.三相同期電動機の原理図と構成
三相同期電動機は三相交流電動機の代表的な電動機です。
電気自動車やハイブリッド自動車ではもっともよく使われている電動機と言えるでしょう。
同時に、産業界でも水力発電や火力発電、原子力発電に使われている発電機は、ほとんどが同期発電機です。
三相同期電動機の基礎のついて解説します。
1-1. 三相同期電動機の原理
三相同期電動機は、”三相で作られる回転磁界に同期して回転する交流電動機”です。
三相同期電動機は、回転する回転子と、三相交流が流れている固定子から成り立ちます。
固定子の三相巻線
3つのコイルが位相(2π/3)づつずれて巻かれています。
電動機では、正弦波電流を位相(2π/3)づつずらして流すことで、回転磁界を発生します。
回転子(永久磁石)
回転するN極とS極の磁石が、回転磁界に引っ張られて回転します。
1-2. 三相同期電動機の構成
固定子
電機子鉄心は、磁束を通しやすいに積層電磁鋼板
電機子巻線は、絶縁された電線を回転磁界が生じるように位相をずらして巻かれます。
回転子
N極とS極の回転体で、実際の形状は円形が一般的。極数は固定子に合わせて多極が多いです。
2.三相同期電動機の動作原理
2-1. コイルから発生する磁束
巻かれたコイルに電流が流れると、「右ねじの法則」に従い、中心を通るように磁束が発生します。
コイルは固定されていますが、コイルに流れる電流の位相をずらすことで、回転子の周りを磁束が回転するように制御します。
2-2. 回転磁界と回転子
固定子側でN極とS極があたかも存在し回転しているように、擬似的に回転磁界を示した図です。
回転磁界の回転に引っ張られる形で、固定子のN極とS極は同じ回転速度で回ります。
2-3. 回転子に回転するトルクが発生するメカニズム
(1) 静止状態
N極とS極が、一線上に位置している場合、
引き合う磁力は生じても、回転する力は生じません。
(2)回転している状態
回転磁界が少し回転し、回転子のN極-S極の軸からズレて、回転磁界のN極とS極が斜めになった場合、
回転磁界に引き寄せられる力から、
回転磁界のN極とS極軸に直角の、磁石を回転させるトルクの成分が生じます。
三相同期電動機は、常に回転磁界と固定子の磁石の軸がズレていることで回転します。
3.三相同期電動機の電機子反作用
三相同期電動機は、回転子が回転することで、固定子の電機子巻線に変化を抑えるように誘導起電力が生じます。
誘導起電力により生じる磁束が、本来の回転磁界に影響を及ぼします。
これを「電機子反作用」といいます。
3-1. 抵抗負荷が接続されている場合(力率1)
固定子磁石を右回転させます。
左図の位置関係で、コイルには左方向に力が加わり、フレミングの左手の法則から、紙面表から裏方向に電流が流れます。
右ねじの法則で、コイルの周りに磁界が発生します。
右側では回転磁界の主磁束とこの磁束の方向が同じなので磁束が増加します。
左側ではこの磁束の方向が反対なので磁束が減少します。
「交さ磁化作用」と言われます。
3-2. リアクトル負荷が接続されている場合(遅れ力率0)
遅れ力率0とは、
「電圧より90°電流が遅れている」
ということは、
「コイルの位置が、回転方向に対して90°遅れること」
を意味します。
回転磁界の主磁束と、電機子により発生する磁束の方向が同じなので、主磁束は増加します。
これを、「増磁作用」といいます。
3-3. コンデンサ負荷が接続されている場合(進み力率0)
進み力率0とは、
「電圧より90°電流が進んでいる」
ということは、
「コイルの位置が、回転方向に対して90°進むこと」
を意味します。
回転磁界の主磁束と、電機子により発生する磁束の方向が反対なので、主磁束は減少します。
これを、「減磁作用」といいます。
3-4. 三相同期発電機の場合
電機子反作用は、発電機として使うときにも発生し、その影響は電動機と逆の方向に影響を及ぼします。
発電機で電機子反作用が生じる原理:
,回転子が右方向に回転する場合、コイルは相対的に左方向に回ることになり、フレミングの右手の法則から、紙面裏から表方向に電流が流れます。
4.三相同期電動機の等価回路とベクトル図
4-1. 三相同期電動機の等価回路(一相)
端子電圧:V を印加したときに、逆起電力:E が生じる状態の一相の等価回路です。
Xs: 電機子同期リアクタンス=固定子リアクタンス
Ra: 電機子巻線抵抗=固定子抵抗
Z = Ra + jXs を電機子巻線インピーダンス
等価回路から電圧関係を作ると
V = Z × I + E = ( Ra + jXs ) × I + E
この関係を、次にベクトル図で表します。
4-2. 三相同期電動機のベクトル図
等価回路をベクトル図で表します。
V: 端子電圧
I: 電機子電流
(端子電圧と位相角Θ)
Ra×I: 電機子抵抗による電圧降下
(電流と同位相)
jXs×I: リアクタンスによる電圧降下
(電流に対し90°位相が遅れます)
E: 逆起電力
(端子電圧との位相差δを負荷角という)
ベクトル図のわかりやすい描き方
- 端子電圧Vを基準に、基準ベクトルを書きます。
- 力率 cosΘ に電機子電流 I ベクトルを書きます。
- リアクタンスによる電圧降下 jXs×I を書きます。
– 電流に対して90°位相が遅れたベクトル - 電機子抵抗による電圧降下 Ra × I を書きます。
– 電流と同位相のベクトル - 電機子抵抗電圧降下の始点と原点を結べば逆起電力 E になります。
5.まとめ
三相同期電動機の原理・構造・等価回路・ベクトル図について解説しました。
参考にしてもらえれば幸いです。
*三相誘導電動機については、下記を参照ください。
三相誘導電動機の動作・特性を回転磁界、誘導起電力の原理から解説します【超初心者向け】
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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