2024/9/4 (更新日:2024/9/4)
CO2の排出量が多いとされる発電方式の火力発電の仕組みを理解しよう【初心者用】
CO2の排出量が多いとされる発電方式の火力発電について理解していますか?
ここでは、初心者がわかるように、火力発電の種類とそれぞれの仕組みをまとめました。
汽力発電、ガスタービン発電、内燃力発電、コンバインドサイクル発電についての説明です。
環境に興味を持っている者が、環境について考える時に基礎になる常識レベルの知識です。
ぜひ一読ください。
目次
- CO2の排出量が多いとされる発電方式の火力発電の仕組み
- 汽力発電
- 内燃力発電
- ガスタービン発電
- コンバインドサイクル発電
1.CO2の排出量が多いとされる発電方式の火力発電の仕組み
火力発電というと、環境に良くない発電方式のように認識されているように思います。
火力発電は熱エネルギーを電気に変換しているので、熱エネルギーを作るときに生じる種々の化合物が問題にされています。
代表が温暖化に影響を及ぼすと言われるCO2:二酸化炭素です。
試算してみると、重油5000t(化学成分:炭素85%,水素15%)を燃やすと、二酸化炭素は15583t 発生します。
数値を見ると、結構な発生量で影響を少し実感できますね。
炭素が燃焼するときの化学式
内訳
火力発電は、熱効率が20%~50/60%と比較的低くなっています。
熱効率が悪いほどCO2を発生するので、熱効率の良いシステムへの転換する努力が勧められています。
健康に悪い影響を及ぼすと言われている、SOx:硫黄酸化物、NOx:窒素酸化物、ばいじんも問題になっています。
対策としては、悪影響を及ぼす物質が少ない燃料を使用したり、使用条件の適用による改善で発生を抑制する努力をしています。
また、問題物質を吸収する装置を設け吸収し排出量を減らしたり、帯電により集めて除去したりして排出量を抑制する努力もしています。
しかし、原理的に有害物質を生じる発電方式なので、環境問題の観点からは極力少なく影響を及ぼさない範囲で使用していきたい発電方式と思えます。
現実的に当面、火力発電を利用していかざるを得ないので、その原理を理解しておく必要があると思います。
火力発電は大きく4分類されます。
汽力発電、内燃力発電、ガスタービン発電、コンバインドサイクル発電です。
それぞれの原理を以下で解説していきます。
2.汽力発電
水を沸かして高温高圧の蒸気をつくり、その蒸気が膨張する力を利用してタービンを回して電気を作ります。
タービンの回転で発電機を回して発電します。
現在主流の発電方式です。
熱効率は、40%程度(目安)です。
*熱効率:熱として投入されるエネルギーのうち、機械的な仕事や電気的なエネルギーに変換される割合
燃料には、重油や液化天然ガスや石炭が使われます。
*タービン:流体のエネルギーを回転運動に変え、機械エネルギーを得るための装置、一般には、羽根車に流体を流体に衝突させ回転させる。
汽力発電概念図
汽力発電の動作は熱サイクルの原理で理解できます。
2-1. ランキンサイクル
最も基本的な熱サイクルです。
汽力発電の基本的な原理です。
水を温めて高温高圧の蒸気にし、その蒸気でタービンを回し、復水器で冷却し、元の水の状態に戻します。
ランキンサイクル
①⇒②【断熱圧縮】:給水ポンプで水を加圧している状態
②⇒③【等圧受熱】:ボイラと過熱器で水を加熱している状態
③⇒④【断熱膨張】:膨張した蒸気をタービン放出し仕事している状態
④⇒①【等圧放熱】:低温低圧になった蒸気を復水器で水に戻している状態
2-2. p-V線図(圧力 – 体積)
ランキンサイクルの熱サイクルの①~④の遷移に対応した変化を記述します。
熱サイクルにおける、圧力p、体積Vの関係図
p-V線図
①⇒②:給水ポンプで水の圧力pは増加しますが、水なので体積Vは変化しません。
②⇒③:水が蒸気になるので体積Vは増加しますが、加圧していないので圧力pに変化はありません。
③⇒④:蒸気を膨張させてタービンに衝突させるので体積Vは増加し、高圧の蒸気は低圧になるので圧力pは低下します。
④⇒①:蒸気を水にするので体積Vは減少します。加圧していないので圧力pは変化しません。
2-3. T-s線図(絶対温度 – エントロピー)
ランキンサイクルの熱サイクルの①~④の遷移に対応した変化を記述します。
熱サイクルにおける、絶対温度T、エントロピーsの関係図
T-s線図
①⇒②:圧力pが増加し温度Tが上昇します。熱の出入りはないのでエントロピーsは変化ありません。
②⇒③:加熱されて温度Tが上昇し、熱を受けているのでエントロピーsも増加します。温度が一時上昇しないのは、沸騰状態(潜熱)。
③⇒④:圧力pの低下により温度Tも下がります。熱の出入りなくエントロピーsの変化もありません。
④⇒①:復水器で冷却しているのでエントロピーsは減少します。
*エントロピー:
絶対温度Tの物質に外部から熱量ΔQを加えて、エントロピーがΔs増加するときの関係
熱量ΔQに比例してエントロピーΔsは増加します。
3.内燃力発電
比較的簡単にどこにいても発電可能な発電方式です。
離島などの小規模な発電で利用されている発電法です。
ディーゼルエンジン・ガソリンエンジンといった内燃機関を利用して発電を行なう発電方法です。
熱効率は、ガソリンエンジンで約30~35%(目安)、ディーゼルエンジンなら約35~40%程度(目安)です。
燃料は、主にガソリン、軽油になります。
ディーゼルエンジンを使うのが主流です。
内燃力発電概念図
乗り物に使われて馴染みのある内燃機関(ガソリンエンジン・ディーゼルエンジン)の出力で発電機を回転し発電する方式です。
発電に使う場合は、乗り物用途に比べ出力が大きなものになります。
離島などで発電する場合は、海水を使い冷却を行っています。
4.ガスタービン発電
蒸気でタービンを回すのではなく、高温の燃焼ガスでタービンを回して電気を作ります。
小型で高出力を得ることができ、始動時間が短いのが特徴と言われています。
熱効率は、20~30%程度(目安)と低い
燃料には、軽油や灯油、天然ガスなどが使われます。
ガスタービン発電概念図
発電サイクル
STEP1:ガスタービンは大量の空気を吸い込み、圧縮機で空気を圧縮します。
STEP2:燃焼器で、圧縮した高圧の空気に燃料を噴射し、燃焼させます。
STEP3:燃焼により高温高圧となった燃焼ガスでタービンを回転させます。
STEP4:タービンの回転力を発電機の軸回転に利用し電力に変換しています。
5.コンバインドサイクル発電
ガスタービンと汽力発電(蒸気タービン)を効率向上のため組み合わせた発電方式です。
はじめに、ガスタービンで発電をします。
ガスタービンから出る高温の排ガスの予熱を使い、水を沸騰させて蒸気タービンを回して発電します。
汽力発電ではボイラで水を沸騰させていたのをガスタービンの排熱を使うことで効率の向上を達成しています。
熱効率は、50%以上(目安)と比較的に高い。
効率を上げることで、CO2排出量・冷却の温排水を減らすことができるので、従来の汽力発電に比べ環境に優しい発電といえます。
近年、積極的に開発されています。
コンバインドサイクル発電概念図
発電サイクル
STEP1:【ガスタービン発電】空気を吸気し圧縮機で空気を圧縮します。
STEP2:【ガスタービン発電】燃焼器で圧縮空気に燃料を噴射して燃焼させて、高温高圧の燃焼ガスを発生させる。
STEP3:【ガスタービン発電】燃焼ガスでガスタービンを回し発電します。
STEP4:【汽力発電】排熱回収ボイラにガスタービンからでた排ガスを入れ、その熱で水を加熱して蒸気を発生させます。
STEP5:【汽力/ガスタービン発電】過熱に使われた排ガスは大気に排出します。
STEP6:【汽力発電】排熱回収ボイラで発生した蒸気でタービンを回し発電します。
STEP7:【汽力発電】復水器で蒸気が冷やされ水になり、排熱回収ボイラへ返ります。
6.まとめ
火力発電全般について解説しました。
今後、詳細についての解説も手掛けていけたらと思います。
参考にしてもらえれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
説明できる内容は限られていますが、極力正確に伝えるように心がけました。
足りない部分、適切でない部分、補足などが有りましたらご指摘等お願いいたします。
Copyright–Seiji Nakamura, 2024 All Rights Reserved.