2025/7/2 (更新日:2025/7/2)
海洋エネルギーを使った潮力発電と波力発電の仕組みと課題を解説いたします【初心者用】

海のエネルギーを利用する発電方式で環境に良いとされる、潮力発電と波力発電についてご存知でしょうか?
ぼんやりとイメージできるかもしれませんが、もう少し理解しましょう。
実用化されているものや、研究段階のものもあります。
ここでは、潮力発電と波力発電の種類と仕組みについて解説いたします。
参照ください。
目次
- 潮力発電の仕組みと海に囲まれている日本における課題(効率、メリット、課題)
- 潮力発電の仕組み
- 波力発電の仕組み
1.潮力発電の仕組みと海に囲まれている日本における課題

海洋エネルギーを利用して発電する「潮力発電」と「波力発電」は大きく異なります。
潮力発電は、潮流の水平方向の流れにより発電します。
潮流の流れは比較的安定しているため安定した発電ができます。
潮力発電は、深い海域に向いている発電方式です。
波力発電は、波の上下運動を利用し発電します。
波は大きさがばらつき発生頻度もばらつくため発電量のばらつきが大きくなります。
波力発電は、浅い沿岸域に向いた発電方式です。
両方式は、注目はされていますが、普及は限定的でまだ実証段階です。
1-1. 効率
比較的高いとされ、20~45 %程度【参考値】と言われています。
潮流が安定したところに設置されているのが前提です。
1-2. メリット
① 発電量が安定している。【潮力】
潮の満ち引きは天候に左右されず年間を通じて安定しています。
そのため、発電量も安定し電力供給も安定しています。
② CO2排出量がほぼゼロ【潮力】【波力】
自然のエネルギーを使った発電のため、発電するときはクリーンな発電方法です。
ただし、設備を作るときにCO2を排出するのはまぬがれません。
③ 景観への配慮が不要【潮力】
潮力発電設備は海中に設置するため、陸上から確認できません。
景観を損ねることも、地上に専用の土地を確保する必要もありません。
④ 経済の活性化【潮力】【波力】
設備建設や設備メンテナンスのため新たな地元に雇用を生みます。
新しい技術・部品などの開発で、新たな市場ができる可能性もあります。
⑤ 枯渇の心配がなく、日本で自給できる。【潮力】【波力】
海に囲まれている日本では、自国のみで確保できる電力です。
1-3. 課題
① 発電設備の建設費が高い【潮力】【波力】
【潮力発電】は、海中に設置するため、特殊な設備を作るためのコストが高くなります。
また、海中に設置した設備のメンテナンスにも特別に費用がかかります。
【波力発電】も海辺への特殊な建設でコストが高くなります。
② 設置する場所に制約がある【潮力】
潮力発電は強い潮流が流れている安定した環境の海底を確保する必要があります。
なおかつ、メンテナンスができる適した水深で、漁業活動に影響を及ぼさない場所である必要があります。
③ 海洋生物への影響【潮力】
設備があることで、直接的または間接的に生態系へ影響を及ぼすおそれがあります。
十分に、環境への影響を事前に調査する必要があります。
④ 災害時の安全性の懸念【波力】
海辺・近海に設置するため、台風・大波により被災するおそれがあります。
⑤ 漁業などへの影響【波力】
漁業などの海運業へ負の影響を与えず共存できるように配慮する必要があります。
2.潮力発電の仕組み

潮力発電とは、潮の満ち引きを利用して電気を発生する発電方式です。
地球が一日に一回自転するため、一日に二回満潮と干潮を繰り返すのが一般的です。
潮力発電には、潮流発電と潮汐発電の二種類あります。
潮流発電は、海峡や湾内などに流れる潮流の運動エネルギーでタービンを回して発電する方式です。
潮汐発電は、湾や河口の入口にダムや水門を作り、満潮時に海水を貯めます。(位置エネルギー)
そして、干潮時に水門を開き海水を放出することでタービンを回して発電します。
2-1. 潮流発電

海峡や湾内では潮の干満により、潮流が水平方向にほぼ規則的に流れます。
海底に固定したタービンの回転軸を流れの方向に合わせることでプロペラが回転し発電します。
発電方法は風力発電と原理的には同様です。

左図は、タービンの回転軸が流れに対し水平な水平軸型タービンの説明図です。
タービンの回転軸が流れに対し垂直な垂直軸型タービンも存在します。
2-2. 潮汐発電


潮汐発電は、潮汐により生じる潮位の差(位置エネルギー)を利用してタービンを回します。
満潮時は、ダムなどの貯水部に海水を貯めます。*1
干潮時にタービンの設置してある水路に溜まった海水を流して、タービンで発電します。
*1:満潮時も、ダムに流入する海水の流れで発電する双方向のものもあります。
3.波力発電の仕組み

波力発電は、世界中で研究されている段階で、研究の中心は欧米になります。
3-1. 波力発電(振動水柱型)

波力発電で実用化されている唯一の発電方式です。
主に、航路用の電源として利用されています。
波の動きを利用して空気を動かしタービンを回します。
発電装置の空気室に流れ込む海水面の上下動により、空気室の空気が吸い込まれるか押し出されます。
その空気の動きにより生じる風の動きを利用して発電機を回し発電します。
3-2. 波力発電(可動物体型)

波のエネルギーを振り子の運動エネルギーに変換して発電します。
海に浸かっている振り子が、波により動かされます。
振り子の根本についている油圧発生装置が波で動かされ、油圧が発生します。
その油圧が送り込まれることで油圧モーターが回転して発電する方式です。
3-3. 波力発電(越波型)

貯水池と海面の高低差を利用して発電する方式です。
貯水池と海の間に防波堤を作ります。
波が防波堤を越えると、海水が貯水池に溜まります。
溜まった海水は発電機が設置されている水路を通り海に戻ろうとします。
その時の海水の流れで発電機を回して発電をします。
ただし、波が生じる程度の海の状態でないと発電できません。
4.まとめ

潮力発電と波力発電の仕組みについて解説しました。
日本も十分に保有している海洋エネルギーを利用した発電方法が普及するのが楽しみです。
基礎知識として参考にしてもらえれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
説明できる内容は限られていますが、極力正確に伝えるように心がけました。
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