2024/11/1 (更新日:2024/11/1)
環境にやさしいと言われる水力発電の仕組み・発電効率を理解してから課題を考える【初心者用】
環境に優しいという水力発電の仕組みを理解していますか?
日本で行われている水力発電方式の仕組みを図解して説明します。
水が持っているエネルギーを使って発電する水力発電の原理についても基礎から解説いたします。
水力発電の理解を深め環境課題について考える一助になれば幸いです。
目次
- 水力発電の仕組み・発電効率とその課題
- 水力発電の仕組み・種類
- 水力発電の発電量
- 水車の種類
- まとめ
1.水力発電の仕組み・発電効率とその課題
高いところにある水が持っている位置エネルギーを利用して、水が下に落ちるときに水車を回して発電する方式です。
水資源に恵まれている日本が国内でつくれる数少ないエネルギーの一つです。
1-1. 効率
自然が蓄えているエネルギーをそのまま電気に変換するので、効率が良い発電方式です。
発電効率:約80%(目安)
1-2. メリット
(1)水源が枯渇しない限り安定的に、またすぐに発電できるので需要に柔軟に対応できます。
(2)発電時に二酸化炭素 CO2をほぼ排出しないクリーンなエネルギーです。
(3)海外に依存しない国産のエネルギーです。
1-3. 課題
(1)発電設備(ダムなど)の建設に時間やコストがかかります。
(2)ダムの建設で環境や生態系に影響が出る場合があります。
(3)新たにダムを建設する場所は奥地で開発コストがますます高くなっています。
参照:経済産業省資源エネルギー庁HP「水力発電」
2.水力発電の仕組み・種類
構造で発電方式を分類すると3方式あります。
水路式発電、ダム式発電、ダム水路式発電
2-1. 水路式発電
自然の地形を利用して、自然のままの河川が持っている高低差から発電します。
水源となる河川から導水路で落差のある場所まで導き、水槽に一時水をためます。
貯めた水を、水圧管で発電所に送り発電します。
水路式発電の構造
2-2. ダム式発電
ダムを作って水を貯めることで、高低差を作り出して発電する方式です。
水を貯められるので、比較的安定して発電することができます。
ただし、ダムにはある程度の水を貯めるため、ダムに沈む地域ができてしまうのは避けられません。
また、ダム建設のため自然を一部壊すなどの環境破壊も生じます。
そして、ダムの建設は大規模で開発コストも膨大になります。
ダム式発電の構造
2-3. ダム水路式発電
水路式発電とダム式発電の両方を使い発電する方式です。
単独のみの方式に比べ、発電量を増やすことが可能です。
この方式が、一般的な水力発電です。
2-4. 揚水発電
下に溜まっている水を高所に揚水し高低差を作り出し発電する方式です。
上記のどの発電方式にでも応用できる概念です。
一般的には、電力が余る夜間にその電力を使い揚水し、昼間に発電しています。
近年は、太陽光発電で発生した昼間の余剰電力を使い揚水し、夜に発電する方式も導入しています。
柔軟に対応することで、再生エネルギー発電の導入拡大にも貢献しています。
揚水発電の構造
3.水力発電の発電量
3-1. 水が持っているエネルギー
流れる水が持っているエネルギーには3形態あります。
(1) 水の位置エネルギー
高さを持っている水にはエネルギーが蓄えられています。
水の高さが低くなると、圧力エネルギーと運動エネルギーに変わります。
(2) 水の圧力エネルギー
上部にある水に押しつぶされる様に力がかかり、圧力エネルギーになります。
(3) 水の運動エネルギー
流れている水は、運動エネルギーを持ちます。
3-2. エネルギー保存の法則
水力発電の電力量は、物理現象なので、エネルギー保存の法則で考えられます。
損失を無視すると、水の持っているエネルギーの和はどの高さでも一定になります。
これをベルヌーイの定理といいます。
図による解説
A1面、A2面で持っている水のエネルギーを考えます。
A1面とA2面でのエネルギー総量は同じ値になります。
A1面でのエネルギー総量:
m1×g×h1 + m1×(p1/ρ) + (1/2)×m1×v12
A2面でのエネルギー総量:
m2×g×h2 + m2×(p2/ρ) + (1/2)×m2×v22
エネルギー保存の法則から、
水力発電のエネルギーの内容
3-3. 水力発電所の出力
発電所では、貯水池に貯められた水の位置エネルギーを最終的に電気エネルギーに変換して電力を供給しています。
発電所の出力
発電所での変換プロセス
①高低差により、水の位置エネルギーが運動エネルギーに変換され、
②流路の水車により、水の運動エネルギーを機械エネルギー(回転)に変換し、
③水車に直結した発電機により、機械エネルギー(回転)を電気エネルギーに変換します。
計算式
実際には、それぞれで損失が生じますので、効率を考慮する必要があります。
発電所に入力されるエネルギー(水車を回すエネルギー)は、
m(kg) ×g(m/s2) ×[h‐hloss](m)
*hloss:摩擦などで失われる水のエネルギー
1秒間に流れる水の流量Q(m3/sec)で表すと、水は1000kg/m3なので
水車を回す、1秒間のエネルギー(入力)P0は、
P0 = Q(m3/sec) × 1000kg/m3 ×g(m/s2) ×[h‐hloss](m)
=Q ×9.8 ×[h‐hloss](kW)
水車の出力P1(発電機の入力)は、
P1 = ηw × P0 (kW)
*ηw :水車の効率
発電機の出力P2は、
P2 = ηg × P1 (kW) = ηw × ηg × P0 (kW)
*ηg :発電機の効率
水路、水車、発電機での損失を差し引いたエネルギーが電力になります。
4.水車の種類
水力発電では、高いところから落下してくる水のエネルギーを、水車により回転に変換して発電をしています。
水車は2つに分類されます。
衝撃水車(ペルトン水車他):水が羽根に衝突する力で回転します。
反動水車(フランシス水車・プロペラ水車他):水が羽根に衝突する力と反動力で回転します。
反動力とは、
反動力とは、放水方向と逆方向に作用する力を指します。
消防の放水のときにホースに受ける力がわかりやすい ”反動力” の例です。
反動水車では、水が排出されるのとは逆方向に生じる力を利用して羽根の回転に変換しています。
4-1. 衝撃水車
ペルトン水車が代表例です。
高低差が大きい所で、水の勢いが確保できる発電所で使われます。
ペルトン水車構造
高低差を利用して、ノズルから水を噴出させます。
水が水車に衝突したときの衝突力により、水車を回転させます。
高低差があり水の勢いがある発電所に適しています。
4-2. 反動水車
羽根の形状により、フランシス水車・プロペラ水車などあります。
高低差が、低~中程度の高低差の発電所で使われます。
日本の水力発電所の7割程度がこの方式です。
プロペラ水車構造
水が流入した後、水車に水が衝突することにより水車は回転します。
その後、羽根にそって水が流出するときに、反動力により水車は更に回転します。
このタイプの水車は、水で満たされているのが前提です。
5.まとめ
水力発電について解説しました。
環境には優しいと言われている水力発電ですが、課題もあります。
他の発電方式とどのようにシェアしていけばいいのかを考える一助になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
説明できる内容は限られていますが、極力正確に伝えるように心がけました。
足りない部分、適切でない部分、補足などが有りましたらご指摘等お願いいたします。
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